2022/02/23 13:31:57
確定申告の期限 実質的に延長
オミクロン株による新型コロナ感染症の全国的な感染拡大を受け、令和3年分所得税等の確定申告の期限が実質的に今年も4月15日に延長されることになります。
昨年との違いは、国税庁長官の告示による一律の期限延長ではなく、個別指定による期限延長の手続において別途申請書を提出することを不要とし、4月15日までに提出する期限後申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載すれば事足りることにする運用面での対応としたことです。この簡易な方法による申告・納付期限の延長は、一昨年の確定申告期限以降にも実施されたことがあります。
ところで、告示による一律の期限延長としなかったのは、コロナ感染症の影響による期限延長に絞りたかったというのが理由の一つです。国税庁担当者によると、昨年は所得税の確定申告件数の約3分の1が当初の申告・納付期限を過ぎた3月16日以降だったということがあります。昨年は一律延長だったから、コロナに関係なく、納付期限を少しでも遅らせたいために申告書の提出が遅れ気味になったのでは――ということも今回の対応の背景にあります。
なお、今回の簡易な方法による延長は、令和4年1月以降に申告等の法定期限を迎える手続のすべてを対象としており、法人税や消費税、源泉所得税、相続税などの申告・納付や各種申請書、届出書類に所得税の申告期限と同じ期限の財産債務調書等の提出なども対象となります。
提出期限等の延長は、納税者にとっても我々税理士にとっても有難いことです。まだ、3月15日前ですので、期限延長の申請をしていませんが、電子申告では余白はないと思いますので、どう入力するか調べます。 各ソフトメーカーごとに違いが出るかもしれません。
2022/01/25 18:44:18
相続税調査等の状況
国税庁が公表した令和2事務年度相続税調査等の状況によると、実地調査における1件あたりの追徴税額が過去10年間で最も多かったことが分かりました。
同事務年度の実地調査は法人税や所得税と同様にコロナ感染症の蔓延に伴う調査制限により、昨年の48%にあたる5,106件まで低下しています。その結果、4,475件から1,785億円の申告漏れ課税価格を把握し、482億円を追徴しています。調査件数が減少する中、非違割合は2.3ポイント上昇するとともに、調査1件当たりの申告漏れ課税価格は3,496万円と22%増加し、その追徴税額も943万円と47.3%も増えていることを考えると、国税当局が少ない実地調査機会でも部内資料等からピンポイントで悪質・高額な事案に的を絞った効率的な調査を行っていることが伺えます。
一方、相続税の無申告が想定される納税者へ書面照会を行って期限後申告書の提出を促すほか、調査すべき問題点が限られる事案には電話や税務署への来署依頼などをする「簡易な接触」は1万3,634件実施しています。こちらは57.9%の増加。無申告事案については、462件に実地調査を実施して409件から455億円の申告漏れ課税価格を把握し、追徴税額は61億円となりました。1件当たりでは申告漏れ課税価格が9,848万円、追徴税額は1,328万円となり、集計開始の平成21事務年度以降最高でした。
相続税の追徴税額が過去最高となるということは、狙いをさだめた税務調査を行っているということでしょう。コロナ禍で調査件数が減少するなか、空振りのない高額事案に絞っているのでしょうか。
2021/12/20 11:19:13
インヴォイス制度導入後の免税事業者の登録申請
令和4年度税制改正の議論が本格化している自民党税制調査会(宮沢洋一会長)において、令和5年10月に予定される消費税のインボイス制度導入後も、免税事業者が柔軟に課税事業者として登録申請ができるよう、課税期間の途中からの登録を可能とする経過措置を盛り込む方針であることが分かりました。
令和4年度税制改正の納税環境整備の一環として検討されており、免税事業者のインボイス登録申請手続について、現行制度は令和5年10月1日の属する課税期間についてのみ、経過措置により課税期間の途中でも登録を受けた日から適格請求書発行事業者となることができます。これに対して改正案では、令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間においても、課税期間の途中からの登録を可能とするものです。これは簡易課税制度の適用においても同様で、課税期間途中の届出であっても、その課税期間に適用するものです。
インボイス制度導入から6年間は認めるという新たな経過措置です。
コロナ禍により、特に影響の大きい免税事業者に配慮してインボイス制度の導入時期を求める声もありますが、今回の経過措置はインボイス制度導入後も免税事業者が登録の必要性を見極めながら、柔軟なタイミングで適格請求書発行事業者となれるようにするのが狙いです。なお、免税事業者からの仕入れについて、当初3年間は8割、その後の3年間は5割の仕入税額控除を認める経過措置は延長されていません。
消費税のインヴォイス制度導入にあたり、小規模の免税事業者は窮地に立たされる可能性があります。
工場などから委託をうけて内職として報酬をもらう方です。例えば、子供の面倒をみたり、親の世話をするために外では働けない方です。工場からは、消費税のインヴォイス番号の記載のある請求書・領収書を求められ、登録申請をしたら、消費税の申告をしなければなりません。今まで、やったことのない方々にとって、経済的にも事務的にも大きな負担となるでしょう。はたして、できるでしょうか?
このインヴォイス制度の導入は、日本の社会構造を変えてしまうかもしれません。
2021/11/23 11:51:06
高額不動産の相続直前の購入
被相続人の死亡の直前に中古不動産を借金で購入していた事案で、路線価による評価が否認され、鑑定評価額により更正処分を受けました。東京地裁は、相続人らが相続税を軽減する目的で土地を購入したと認定し、課税処分は適法と判断しました(令和2年11月12日判決)。
被相続人Aは89歳で死亡する2か月前に高級賃貸マンションを購入しました。この物件は不動産会社のL社が当初購入した時は7億5,000万円でしたが、わずかな間に売買を繰り返し、Aが購入した時には15億円となっていました。Aは同時に、同額の借入れを銀行から行いました。Aの死亡後、相続人のXらは本件不動産を路線価により4億7,800万円と評価し、相続税の申告を行いました。
これに対し処分行政庁は、取引価格と路線価による評価額が著しく乖離していることから、「評価通達により難い特別の事情がある」として否認しました。不動産鑑定士による評価額10億4,000万円で更正処分を行いました。Xらはこの処分を不服として提訴していた。
東京地裁は、本件不動産の価額が通達評価額と鑑定評価額で2倍、購入価格とは3倍の乖離があり、これによって課税額にも大幅な差異が生じているとした上で、Xはかねてから相続税対策について銀行に相談し、Aがガンにり患したことが発覚した直後に相続税の圧縮効果を期待して本件不動産を購入したものであり、このことは「特別の事情」の存在を基礎づけるものであると認定しました。Xらの請求を棄却しました。
昔、私が税理士試験で相続税を受験したときは、取得価額課税という制度がありました。現在は、施行されていません。相続開始前3年間は、その取得価額で評価するというものです。 節税手法として不動産の購入は、当たり前のようになされた時代もありました。現在のタワーマンションなどへの投資の流行も一考の余地はあります。
2021/10/25 18:10:43
令和4年度における土地の価格の特例
総務省はこのほど、固定資産税について「令和4年度における土地の価格の特例(いわゆる「下落修正」)の実施について」と題する通知を、都道府県を通じて全国の市区町村に発出しました。これは、先ごろ国土交通省から公表された都道府県地価調査で、新型コロナウイルス感染症の影響等により全国の地価が昨年に引き続き下落していることを踏まえたものです。これを受け、全国の市区町村では、区域内の地価の状況を的確に把握して下落修正を行うなど、適正な評価事務に努める必要があります。
土地の固定資産税の課税標準となる価格は3年間据え置くことが原則とされており、令和3年度が基準年度であったことから、原則として4年度、5年度は据え置かれるはずでした。ところが、この9月下旬に国土交通省から公表された令和3年都道府県地価調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響等により全国の全用途平均及び住宅地で、昨年に引き続き下落し、特に商業地では下落率が拡大している状況が明らかとなりました。このような状況を受け、総務省は、各市区町村の区域内における地価の状況を的確に把握して修正基準に基づき下落修正を行うなど、適正な評価事務の執行に努めるよう周知するべく、今回の通知を発出する運びとなりました。
なお、この下落修正の特例措置については、去る7月1日に「令和4年度又は令和5年度における土地の価格に関する修正基準の取扱いについて」と題した修正基準が告示されています。この修正基準によって、全国の市区町村は適宜、土地の課税標準となる価格を見直すことになります。
土地の価格が新型コロナウイルス感染症の影響で下落しているとのことです。お役所の担当者は、大変ですが、市民のために頑張ってください。少しでも固定資産税が安くなると助かる方は大勢おられます。