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税理士日記

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孫への贈与による相続税への影響

2023/05/23 13:25:08

孫への贈与による相続税への影響

 ひと頃、孫を養子にすると、(1)相続税の基礎控除額が増える、(2)法定相続人の増加によって累進税率が緩和される、(3)孫の時代の相続税負担を回避できる――などの理由から、いわゆる「孫養子縁組」が盛んに行われたことがあります。ただ、養子となった孫の相続税が2割加算の対象になってからは急速に萎んでいきましたが、最近、相続税対策として注目されているのが「孫への生前贈与」です。
 というのも、贈与税の基礎控除枠110万円を相続対策として活用する「暦年贈与」については、既にご承知のとおり、今年度改正で被相続人の生前に贈与された財産を相続財産に「持ち戻す」期間が3年間から7年間に拡大されましたが、相続人となっていない孫への贈与は相続税の課税対象とはならないからです。
 この暦年贈与と並んで注目されているのが「相続時精算課税」です。これは2,500万円までの生前贈与が非課税となりますが、相続時に受贈財産を相続財産に持ち戻して課税するというもので、孫の場合は孫養子と同様に2割加算の対象となります。ところが、これについても今年度改正で年110万円の基礎控除が暦年贈与とは別枠で新設され、それ以下の贈与財産は相続財産に持ち戻されないことになりました。このため、孫持ちにとっては相続対策の手段が大幅に広がったといえそうですが、暦年贈与か相続時精算課税かは選択制ですので、どちらかを選ぶ必要があることから、慎重な判断が求められます。

 相続税の節税については、いろんなアイデアが出ております。それを実行しても、裏目にでる場合もあります。じっくりと考えて、納得されてから行動されてください。

販売用マンションの購入について消費税の処理

2023/04/25 09:27:57

販売用マンションの購入について消費税の処理

 販売用マンションの購入時にかかった消費税額が、個別対応方式による控除税額の計算上、「課税売上げのみに要する仕入れ」か「共通対応課税仕入れ」かをめぐり争われた裁判で、最高裁は「共通対応に該当する」として国側の主張を認めました(令和5年3月6日判決)。
 中古マンションを仕入れ、リフォーム等を施して転売する事業を営んでいるX社は、マンションの仕入れに係る消費税額を「課税売上げのみに要する仕入」として仕入税額控除の計算を行っていたところ、所轄税務署長より「マンションの貸付けによる賃料収入も含まれるため、共通対応課税仕入に該当する」として否認を受けたため、訴訟を提起しました。一審・東京地裁は「賃料収入はマンションを転売するための副産物」として、仕入自体は「課税売上げのみに要する仕入」としてX社の主張を認容。控訴審・東京高裁は、非課税売上を生ずる取引が客観的に見込まれる場合は共通対応に該当するとして、一転X社敗訴となりました。
 最高裁では、課税売上と非課税売上の双方に対応する課税仕入は、当該事業に関する事情等を問うことなく、共通対応課税仕入に該当すると解するのが消費税法の趣旨に沿うものというべきとし、X社の上告を棄却する判断を下しました。また、過少申告加算税を課さない「正当な理由」があるか否かについても、事業者としては共通対応とする取扱いが行われることを予測できたため、「正当な理由」はないとしてX社の主張を斥けました。

 現在、令和2年4月の税制改正により居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限があり、消費税の処理についてより慎重な判断が求められています



令和5年度税制改正法案成立、相続税改正6年1月施行

2023/04/11 15:10:10

令和5年度税制改正法案成立、相続税改正6年1月施行

 令和5年度税制改正の内容を実施する所得税法等の一部改正法が3月末に成立し、そのほとんどが令和5年4月1日に施行されました。ただし、生前贈与を促す改正として税理士の関心を集めている相続税法の改正等は令和6年1月1日に施行されます。
 令和5年4月1日施行の改正から確認すると、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が3年間延長されるとともに、契約終了時の残高に課される贈与税の税率を一般税率(直系尊属から贈与の特例税率より高い)とするなどの課税強化が同日以後に取得するものから適用されます。2年間の期限延長となる結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置も同様の課税強化がされます。
 一方、令和6年1月1日以後の贈与に適用される相続時精算課税の基礎控除の創設は、相続税法の改正において60万円控除が規定されていますが、租税特別措置法の改正における110万円控除に読み替えて適用されます。相続税の課税価格への加算期間を相続開始前3年以内の贈与から7年以内に伸ばす相続税法改正は、同日以後の贈与により取得する財産の相続税に適用されます。加算期間の延長により相続税増税となることから、改正前の制度を適用するための駆込みは令和5年中に実施する必要があります。ただし、延長された4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算されないので、税理士の一部では、被相続人の平均余命等によって暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かの試算がされている模様です。
      
 贈与のような長期の年月を見据えたプランを要する税金の出口が、だんだん複雑になっています。人間は年をとります。いろんなことを忘れてしまいます。
 ただ、相続時精算課税の基礎控除は朗報です。

インボイスの2割特例や4月以降の登録申請

2023/03/31 16:14:21

インボイスの2割特例や4月以降の登録申請

 国税庁はこのほど、インボイスコールセンターに寄せられた質問のうち、問合わせの多い「お問合せの多いご質問」(いわゆるFAQ)を更新しました。年が明けてから、令和5年度税制改正法案の質問が多く寄せられるようになり、今回、納付税額が売上税額の2割に軽減される2割特例や、原則は令和5年3月末が期限の登録申請についての4月以降の弾力的な運用の2項目を追加しました(計15問)。
 納付税額の2割特例については、インボイス制度を機に免税事業者から適格請求書発行事業者になった場合の税負担・事務負担を軽減するため、売上税額の2割を消費税の納付税額とする経過措置が講じられるとしています。この特例の適用を受けるための事前の届出等は不要であり、申告時に選択できること、令和5年10月1日から令和8年9月30日を含む課税期間に適用できると回答しています。例えば、個人事業者は、令和5年10月から12月の申告から令和8年分の申告までの4回分が対象となります。
 登録申請の弾力的運用については、令和5年度税制改正大綱(閣議決定)において、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業が、令和5年3月31日より後に提出する場合の登録申請書に記載する「困難な事情」について、運用上、記載がなくとも改めて求めないとするものです。この閣議決定に基づき、令和5年4月1日以降に登録申請を行う場合には、「困難な事情」を記載しなくても、令和5年9月30日までの申請は、インボイス制度が開始する令和5年10月1日を「登録開始日」として登録することを明言しています。

 消費税のインボイス制度は、零細の事業者まで巻き込み、請求書の様式という基本的な帳票にまで影響を及ぼしています。零細事業者への恒久的な救済措置が望まれます。例えば、家庭で内職をされているような零細事業者でもインボイスを企業から求められています。企業からすれば、数人の内職の方ではなく、数百人、数千人の報酬となれば、金額は大きくなります。企業側も内職の方もジレンマに陥っています。内職の方も消費税の申告をする必要があるのでしょう。
 インボイスと消費税の納税義務をセットにするとこうなります。

合資会社の社員が死亡した場合の持分払戻請求権

2023/03/23 14:55:52

合資会社の社員が死亡した場合の持分払戻請求権

 合資会社の社員が死亡した際の持分払戻請求権について、出資金額を超える部分がみなし配当として課税されました。審判所は、本件合資会社の定款に持分の承継に関する定めがなく、相続により時価相当額の経済的価値がもたらされたため、出資額を超える金額はみなし配当と認められると判断し、原処分を適法としました(令和4年6月2日裁決)。
 合資会社の無限責任社員であったAが死亡。相続人XはAの死亡退社に伴う持分払戻請求権を零円とする同意書を作成した上、共同相続人が各5分の1ずつの払戻請求権を取得する旨の遺産分割協議を成立させました。原処分庁は、払戻請求権のうちAの出資金額(元本)を超える部分がみなし配当に該当するとして更正処分等を行いました。Xはこの処分を不服として審査請求しました。
 審判所は、本件合資会社の定款には持分の承継に関する定めがないことからすれば、Aは死亡退社により本件払戻請求権を取得したものと認められ、Aが有していた社員権が払戻請求権に転換した時点、すなわち、相続開始日において払戻請求権の価額相当額の経済的価値がAにもたらされたといえると指摘しました。
よって、当該価額相当額のうち、出資に対応する部分の金額を超える金額は、Aのみなし配当と認められると判断しました。課税処分は適法であったとして、Xの請求を棄却しました。

 持分会社の払戻請求権については、慎重に検討する必要があります。注意しましょう。



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