2016/05/24 08:38:42
純資産価額方式の法人税額等相当額の割合の引き下げ
平成28年度税制改正の法人税率の引下げなどにより、法人実効税率が下がるのを踏まえて、国税庁は、平成28年4月1日以後に相続等により取得した取引相場のない株式等を純資産価額方式で評価するときの法人税額等相当額の割合を「38%」から「37%」に引き下げることを明らかにしました。財産評価基本通達の一部改正(平成28年4月6日付)により見直すもので、取引相場のない株式等の評価明細書の様式についても同様の改正が行われています。
周知のとおり、取引相場のない株式等の相続税評価については、評価する株式を発行した会社を、従業員数や総資産価額、売上高により、大会社・中会社・小会社のいずれかに区分して評価するのが原則で、純資産価額方式は、原則、小会社が適用することになっています(中会社は類似業種比準との併用)。
この純資産価額方式では、評価した総資産の価額から、負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価するとしているが、法人税額等相当額は、国税の法人税(地方法人税を含む)、地方税の事業税や道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合なので、今回の法人実効税率の引下げが影響します。法人税率の引下げは平成28年4月1日以後の開始事業年度から適用されるので、相続税評価においても同日以後に相続等した取引相場のない株式等から適用されることになります。
法人税等の税率の引き下げは、相続税の現場でも影響を与えています。ちなみに、法人税額相当額が小さくなると、株価評価額は大きくなります。
2016/04/27 17:29:30
信託にいての訴訟の紹介
近年、家族信託などの信託が身近になっております。信託に関係する判決をご紹介します。
滞納した固定資産税に充当するため、滞納者を受託者とする信託財産である土地の賃料を含む賃料債権の全てを差押えした彦根市の処分について、最高裁はこのほど適法であるとの判断を下し、滞納者の訴えを棄却する判決を言い渡しました(平成28年3月29日第三小法廷判決・平成26年(行ヒ)228号)。
本件は、彦根市長が固定資産税を滞納している者を受託者とする信託財産である土地と、その上に建てられた滞納者所有の家屋等を含めた土地・家屋に係る賃料債権の全体に対して差し押えたことから、その滞納者がこの処分を不服として市を相手に訴えた事案です。1審では市が勝訴したものの2審で敗訴し、最高裁に上告していました。
最高裁は、信託法に定めるとおり、原則としては信託財産とその果実である賃料債権を差し押さえることはできないものの、旧信託法28条が信託契約の受託者は信託財産を固有財産と他の信託財産とに分別管理することを要する旨を規定していることなどから、本件土地の賃料相当額部分と本件家屋等の賃料相当額部分とに区分されるものと解するのが相当と判断しました。したがって、本件土地とその上に建てられた家屋等に係る賃料債権の全てをいったんは差し押さえ、そのうち家屋等に係る賃料相当部分を本件土地の滞納固定資産税に充当することは何ら法律に反するものではないと判示し、市の差押え処分を適法としました。
少しややこしいですが、今後、こんな案件が増えると思います。
2016/03/24 15:59:14
太陽光発電あれこれ
近年 太陽光発電で売電をされる法人が増えました。契約時期により、次第に売電の買取金額が下がり、事業としての採算は厳しくなってきております。
税金の方は、法人事業税の計算に注意が必要です。太陽光発電は所得(利益)ではなく、収入(売上)に対して事業税がかかります。太陽光発電以外の事業は、所得に対して事業税がかかるため、帳簿を作成する際、太陽光発電とそれ以外の事業を区分しておく必要があります。決算の時に、冷や汗をかかぬように、日頃から整理しておきましょう。 (実は、私の冷や汗でした。とほほ。)
2016/02/22 09:33:00
遊休農地への課税等
遊休農地が全国的な拡大を見せる中で、平成28年度税制改正では、遊休農地への固定資産税の課税を強化して、こうした傾向に歯止めをかける方向です。
具体的に課税強化の対象となるのは、農地法に基づく農業委員会による農地中間管理機構の農地中間管理権の取得に関する協議の勧告を受けた遊休農地。固定資産税における農地の評価においては、農地売買の特殊性を踏まえて、正常売買価格に0.55を乗じて評価額を算定しているが、このような遊休農地に対しては、これを乗じないこととするなどの評価方法の変更を固定資産評価基準の改正により行います。改正の適用時期は平成29年度からとされています。
一方、農地については課税の軽減も行われる予定で、所有するすべての農地(10アール未満の自作地を除く)に農地中間管理事業のための賃借権等を新たに設定し、かつ、その賃借権等の設定期間が10年以上である農地に係る固定資産税等については、課税標準を最初の3年間、価格の2分の1とする措置を2年間に限り講ずることとされます。なお、賃借権等の設定期間が15年以上である農地の課税標準については、最初の5年間、価格の2分の1となります。
このように農地に対しては、課税の強化と軽減を政策的に実施し、農地の有効活用を促していく構えです。
空き家に引き続き、遊休農地も政策的に活用しようということです。固定資産税の有り方にも注目ですね。
2016/01/22 14:43:28
押印漏れで相続税の申告書が無効か?
国税不服審判所が公表した裁決事例によると、押印が漏れている相続税申告書がその効力を認められるか否かをめぐる争いで、「納税者の意思に基づく申告書と認められる」と判断されたことが明らかになりました(平成27年4月1日裁決)。
請求人Xは法定申告期限内に相続税の申告書を提出したものの、押印を失念しました。税務署は、この申告書が国税通則法の規定を充足しておらず、Xの申告の意思を認めることができないため、申告書は有効なものと認められず、期限内申告にはならないとして無申告加算税の賦課決定処分を行いました。
これに対して審判所は、「申告書の効力については、押印がない場合であっても、単なる押印漏れであることも考えられるので、納税申告書として他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもってその効力がないものとはいえない」と指摘した上で、本件申告書については、(1)遺産分割協議で成立した内容を基に共同相続人の総意により作成されたものであること、(2)Xは共同相続人である長女に税務署への提出を任せ、長女が現に提出したものであること、(3)Xが申告納税義務を認識し相続税を納期限内に全額納付したこと――などがそれぞれ認められることから、Xの意思に基づいて提出されたものと認めるのが相当であると判断しました。Xの主張を全面的に認め、申告書は有効であり、期限内申告に該当するとしました。
以前、知合いから、相続税の申告書に押印しなかった件について相談を受けたことがあります。無申告加算税を支払ったようです。 きついですよね。