2017/08/23 16:39:02
民法に相続税法の取扱いが反映されるかも
法制審議会・民法(相続関係)部会は、昨年の中間試案に続き、相続関係の民法改正の追加試案を8月1日にパブリック・コメントに出しました(9月22日まで)。遺産分割の見直しの中で、婚姻20年以上の配偶者に贈与された居住用不動産を遺産から除外する案が新たに加わる見込みです。贈与税の配偶者控除の対象不動産が民法の規定に取り込まれるのか、注目されます。
遺産分割の見直し案は、今年2月28日の同部会の第18回会議などで重点的に検討されたが、この時点では、甲案(持戻し免除の意思表示の推定規定)と、乙案(持戻し計算を不要とする旨の規定)の2案がありました。その後、乙案は消え、甲案がパブリック・コメントに出される見込みです。具体的には、民法903条に「婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他方の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地の全部又は一部を遺贈又は贈与したときは、民法903条3項の意思表示があったものと推定する」という規定を加えます。意思表示とは、贈与した財産を、相続財産に持戻しするのを免除することの意思表示であり、結果として、遺産分割の対象から除外することになります。
「婚姻期間20年以上」の根拠について、同部会は、居住用不動産の贈与に対する配偶者控除(基礎控除110万円と2,000万円の合計まで非課税)を挙げ、民法上も一定の措置を講ずることは配偶者の生活保障をより厚くするものとして、経験則及び政策的観点の双方からその立法事実が根拠付けられる――と説明しています。
民法に相続税法の取扱いが反映されるかもしれません。珍しいケースです。今後の動向を注目します。
2017/07/24 17:57:36
ふるさと納税の増加
総務省自治税務局市町村税課が取りまとめた「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、平成28年度のふるさと納税の実績は、受入件数がおよそ1,271万件(前年726万件)、受入額はおよそ2,844億円(前年1,653億円)となり、受入件数、受入額ともに前年と比較して大幅に増加しました。
この調査は全ての地方団体(1,788団体:都道府県47団体、市区町村1,741団体)を対象に行われ、地方団体別では、宮崎県の都城市の受入額がおよそ73億3,300万円(前年42億3,100万円)で昨年に引き続き最も多く、続いて長野県の伊那市がおよそ72億500万円(前年25億8,300万円)、静岡県の焼津市が51億2,100万円(前年38億2,600万円)となっています。
ふるさと納税の受入件数および受入額が増加した主な理由として、地方団体の半数以上が「返礼品の充実」と「ふるさと納税の普及、定着」をあげており、そのほかの理由として、クレジット納付や電子申請の受付等による「収納環境の整備」、「HP等の広報の充実」、平成27年度の税制改正による控除限度額の拡充、確定申告が不要な給与所得者等が寄附を行う場合にワンストップで控除を受けられる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設、「使途、事業内容の充実」、「震災・災害への支援」等があがっています。
ふるさと納税は、返礼品が過度に豪華になり、本来の制度の目的とされる寄附文化の定着から逸脱しているのではないかとの批判もあり、3割を超える返礼割合の返礼品を送付している地方団体は、速やかに3割以下にするよう総務大臣が通知した経緯があります。
そのような背景もあり、今後、ふるさと納税制度がどのように活用されていくのか、地方団体の動向が注目されます。
私もふるさと納税を昨年いたしました。インターネットで特定のサイトからクレジットカード決済で行えるので、手軽でした。また、何より食品を返礼品に選ぶと、家族が大喜びするので、やめられません。
せっかくの庶民の楽しみです。返礼品を3割以下と言わず、大目に見てくだせえ。
2017/05/23 09:05:01
固定資産税の過大賦課徴収の裁判例
土地に係る固定資産税の減額特例を適用せずに、自治体が誤って固定資産税を過大賦課徴収していた事案で、東京地裁は自治体側の責任を認め、国家賠償法上違法であると判断しました(平成28年10月26日判決)。
原告の甲は所有する土地について、A都税事務所長から一般住宅用地等として固定資産税の税額の通知を受け、通知どおりの額を納付していました。甲は平成16年に本件土地上に建物を建築(不動産登記記録には「養護所」と記載)。
本来、それ以降本件土地は「小規模住宅用地」等として固定資産税の減額措置が適用されるはずであったものの、減額がされないまま過大な徴収が行われていました。甲から本件土地を相続した原告Xも同様に固定資産税を納付していましたが、平成26年10月ごろに、過大に徴収されていることが発覚しました。
裁判では、被告・A都税事務所長から還付を受けられなかった平成17年度分〜平成21年度分までの過納付金相当額の支払が求められました。東京地裁は、被告の国家賠償法上の違法の有無について、「被告評価担当職員は、小規模住宅用地の所有者からの申告の有無にかかわらず各要件の有無を調査し、特例が適用される土地にはその基準に従って算出した価格を評価すべき職務上の注意義務を負っている」と指摘しました。固定資産税の過大な賦課徴収行為は違法というべきと判断しました。
うーん、このような事例は、これから頻発するかもしれません。お役人のチェック機能が問われる状況です。過去の賦課を再確認する必要がありそうです。
2017/04/24 16:54:53
ふるさと納税の返礼品の上限の割合 3割へ
総務省は、ふるさと納税で過熱している地方団体間のいわゆる返礼品競争を緩和させるため、寄附金に対する返礼品の割合を3割以下とすることなどを求めた通知をこのほど、都道府県を通じて全国の地方団体に発出しました(総税市28号・平成29年4月1日付)。
通知はまず、ふるさと納税の募集に関する基本的事項として「寄附を受ける地方団体は、返礼品の送付を強調してふるさと納税を募集することを慎む」ことを明示しました。大切なのは、寄附金の使用目的を地域の実情に応じて工夫することであり、このことを十分に周知して募集することを求めています。
重要なのは「返礼品のあり方」。「返礼品の送付が対価の提供との誤解を招きかねないような表示により寄附を募集する行為を行わないようにすること」としました。あくまでも寄附は無償の行為であることが基本であると強調しているといえ、「返礼品の価格」や寄附額の何%相当などといった「返礼品の価格の割合」を表示しないことを要求しています。このような考え方から、ふるさと納税の趣旨に反するような返礼品についても具体例をあげ、プリペイドカードや商品券などの金銭類似性の高いものや電子機器、家具など資産性の高いものなどは返礼品として送付しないとしています。また、寄附額に対する返礼品の割合の高いものも同様で、この割合の上限を「社会通念に照らし良識の範囲内のもの」として3割とすることも示しています。
返礼品を楽しみにされている皆さんには、冷水を浴びせられた感は、ありますよね。やはり、規制が入りました。
ふるさと納税は、返礼品によって、寄付をする自治体をえらんでいるのが実態です。 返礼品を扱う業者は、大儲けしているところもあると思います。業者の選定について、随意契約となっているか否かのチェックも必要ですね。やはり、元は自治体への寄付金ですから。
2017/03/24 10:32:31
類似業種比準方式の見直し
平成29年度改正では、非上場株式の相続税評価における類似業種比準方式の見直しが行われます。国税庁の財産評価基本通達を見直すため、同庁は3月1日に改正案を公表し、同月30日までパブリックコメントに付しています。
同方式の比準要素の見直しについて、1つは、上場企業の配当や利益、簿価純資産を「1対3対1」の割合で計算していたのを「1対1対1」に改めます(同通達180)。これにより利益の比重は5分の3から3分の1になるので、利益を出す成長企業の評価は下がり、一方で、純資産の比重が5分の1から3分の1と大きくなるため、内部留保の多い企業は評価が高くなる可能性があります。
2つ目は、上場企業において連結経営が進む状況を反映するため、連結財務諸表に基づく比準要素に改めます。
3つ目は、上場企業の類似業種株価について、前月、前々月、前々月の前月の中から最も小さいものと、前年平均の株価との選択制だったのを、「前2年平均」でも差し支えないとして(同182)、上場企業の株価が急上昇しても株価の影響を抑えるようにします。
4つ目は規模区分を見直し、大会社と中会社を拡大します(同通達178)。例えば、大会社の従業員数を100人以上から70人以上に下げるなどして大会社の範囲を拡大します。純資産価額との併用方式となる中会社については、中会社のなかの大中小を区分する総資産価額や取引金額を引き下げ、類似業種比準方式の割合が0.9と最も高い「中会社の大」の範囲を広げる見込みです。
相続税の財産評価においても、中小企業の内部留保に課税しようとする考え方が反映したものとなっているようです。その一方で、大会社の範囲を広げるなど世の中の現状に留意したものとなっているようです。