2017/10/23 18:32:41
ほっておくと休眠会社などの登記が整理され、みなし解散
法務省は10月12日、休眠会社等の整理作業を行うため、12年以上にわたって登記のない会社や、5年以上登記のない一般社団・一般財団法人について、法務大臣の公告を行うとともに、該当する休眠会社等に管轄登記所からその旨の通知書を発送しました。
これは、会社法により、株式会社の取締役の任期は原則2年、最長でも10年とされており、取締役の交替や重任の場合にはその旨の登記が必要となります。したがって、取締役の任期毎(少なくとも10年に一度)に取締役の変更の登記がされるはずであります。また、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律により、一般社団法人や一般財団法人の理事の任期は2年とされ、同様に少なくとも2年に一度、理事の変更の登記がされるはずであり、長期間登記がされていない株式会社や一般社団法人、一般財団法人は既に事業を廃止し、実体がない状態となっている可能性が高いというのが今回の公告の理由です。休眠状態の株式会社や、一般社団法人、一般財団法人の登記をそのままにしておくと、商業登記制度に対する国民の信頼が損なわれると続けています。
公告により、これらの休眠会社等は、公告の日(10月12日)から2か月以内となる本年12月12日までに、「まだ事業を廃止していない」旨の届出や役員変更等の登記の申請をしないと、みなし解散の登記がされます。
事業に行き詰まり、実態がなくなっている会社が、たくさんあります。これらが登記上整理されることは、よいことであると思います。みなし解散はよいのですが、清算はされないようです。会社を消滅させるには、清算結了登記をしなければなりません。
2017/09/25 15:37:36
役員退職慰労金の損金算入
役員退任後に報酬が激減したにもかかわらず、引き続き経営に関与しているとして役員退職慰労金の損金算入が否認された事案で、東京地裁は納税者の主張を斥け、税務当局の処分を適法と認める判決を下しました(平成29年1月12日判決)。
原告X社は、前代表者甲の退任に伴い支払った退職慰労金は損金算入されるべきであったとして更正の請求を行いましたが、税務署長は更正すべき理由がない旨の通知処分を行いました。
X社は、甲の月額報酬は退任前の約3分の1に激減しており、これは役員退職給与の要件を定める法人税基本通達9−2−32の(3)「分掌変更等の後におけるその役員の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと」を充足していると主張しました。
これについて東京地裁は、「甲は退任後も引き続きX社の経営判断に関与して後任の代表者乙への指導や助言を続けていた」と指摘しました。このことに照らすと、甲の退任後の月額報酬は、甲が引き続きX社への関与を続けることを前提として定められたものとみるのが相当であり、報酬減額の事実は、「甲の役員としての地位・職務内容が激変して実質的に退職したと同様の事情にある」とまでは認められないと判断しました。また、甲は上記通達の除外要件である「その法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者」に該当するから、甲への退職慰労金は損金算入できないと判示しました。
弊事務所では、役員の方が退職される際は、実質的に経営に関与しないくらいの判断基準をもって役員退職慰労金を損金算入すべきと考えています。微妙な実質の判断で足をすくわれないようにしましょう。
2017/08/23 16:39:02
民法に相続税法の取扱いが反映されるかも
法制審議会・民法(相続関係)部会は、昨年の中間試案に続き、相続関係の民法改正の追加試案を8月1日にパブリック・コメントに出しました(9月22日まで)。遺産分割の見直しの中で、婚姻20年以上の配偶者に贈与された居住用不動産を遺産から除外する案が新たに加わる見込みです。贈与税の配偶者控除の対象不動産が民法の規定に取り込まれるのか、注目されます。
遺産分割の見直し案は、今年2月28日の同部会の第18回会議などで重点的に検討されたが、この時点では、甲案(持戻し免除の意思表示の推定規定)と、乙案(持戻し計算を不要とする旨の規定)の2案がありました。その後、乙案は消え、甲案がパブリック・コメントに出される見込みです。具体的には、民法903条に「婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他方の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地の全部又は一部を遺贈又は贈与したときは、民法903条3項の意思表示があったものと推定する」という規定を加えます。意思表示とは、贈与した財産を、相続財産に持戻しするのを免除することの意思表示であり、結果として、遺産分割の対象から除外することになります。
「婚姻期間20年以上」の根拠について、同部会は、居住用不動産の贈与に対する配偶者控除(基礎控除110万円と2,000万円の合計まで非課税)を挙げ、民法上も一定の措置を講ずることは配偶者の生活保障をより厚くするものとして、経験則及び政策的観点の双方からその立法事実が根拠付けられる――と説明しています。
民法に相続税法の取扱いが反映されるかもしれません。珍しいケースです。今後の動向を注目します。
2017/07/24 17:57:36
ふるさと納税の増加
総務省自治税務局市町村税課が取りまとめた「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、平成28年度のふるさと納税の実績は、受入件数がおよそ1,271万件(前年726万件)、受入額はおよそ2,844億円(前年1,653億円)となり、受入件数、受入額ともに前年と比較して大幅に増加しました。
この調査は全ての地方団体(1,788団体:都道府県47団体、市区町村1,741団体)を対象に行われ、地方団体別では、宮崎県の都城市の受入額がおよそ73億3,300万円(前年42億3,100万円)で昨年に引き続き最も多く、続いて長野県の伊那市がおよそ72億500万円(前年25億8,300万円)、静岡県の焼津市が51億2,100万円(前年38億2,600万円)となっています。
ふるさと納税の受入件数および受入額が増加した主な理由として、地方団体の半数以上が「返礼品の充実」と「ふるさと納税の普及、定着」をあげており、そのほかの理由として、クレジット納付や電子申請の受付等による「収納環境の整備」、「HP等の広報の充実」、平成27年度の税制改正による控除限度額の拡充、確定申告が不要な給与所得者等が寄附を行う場合にワンストップで控除を受けられる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設、「使途、事業内容の充実」、「震災・災害への支援」等があがっています。
ふるさと納税は、返礼品が過度に豪華になり、本来の制度の目的とされる寄附文化の定着から逸脱しているのではないかとの批判もあり、3割を超える返礼割合の返礼品を送付している地方団体は、速やかに3割以下にするよう総務大臣が通知した経緯があります。
そのような背景もあり、今後、ふるさと納税制度がどのように活用されていくのか、地方団体の動向が注目されます。
私もふるさと納税を昨年いたしました。インターネットで特定のサイトからクレジットカード決済で行えるので、手軽でした。また、何より食品を返礼品に選ぶと、家族が大喜びするので、やめられません。
せっかくの庶民の楽しみです。返礼品を3割以下と言わず、大目に見てくだせえ。
2017/05/23 09:05:01
固定資産税の過大賦課徴収の裁判例
土地に係る固定資産税の減額特例を適用せずに、自治体が誤って固定資産税を過大賦課徴収していた事案で、東京地裁は自治体側の責任を認め、国家賠償法上違法であると判断しました(平成28年10月26日判決)。
原告の甲は所有する土地について、A都税事務所長から一般住宅用地等として固定資産税の税額の通知を受け、通知どおりの額を納付していました。甲は平成16年に本件土地上に建物を建築(不動産登記記録には「養護所」と記載)。
本来、それ以降本件土地は「小規模住宅用地」等として固定資産税の減額措置が適用されるはずであったものの、減額がされないまま過大な徴収が行われていました。甲から本件土地を相続した原告Xも同様に固定資産税を納付していましたが、平成26年10月ごろに、過大に徴収されていることが発覚しました。
裁判では、被告・A都税事務所長から還付を受けられなかった平成17年度分〜平成21年度分までの過納付金相当額の支払が求められました。東京地裁は、被告の国家賠償法上の違法の有無について、「被告評価担当職員は、小規模住宅用地の所有者からの申告の有無にかかわらず各要件の有無を調査し、特例が適用される土地にはその基準に従って算出した価格を評価すべき職務上の注意義務を負っている」と指摘しました。固定資産税の過大な賦課徴収行為は違法というべきと判断しました。
うーん、このような事例は、これから頻発するかもしれません。お役人のチェック機能が問われる状況です。過去の賦課を再確認する必要がありそうです。