2019/04/25 09:17:57
ポイント還元事業参加のキャッシュレス決済事業者の募集
経済産業省は3月、本年10月の消費税率アップの反動減対策として9か月間、実施されるポイント還元事業に参加するキャッシュレス決済事業者の登録受付を始めました。
登録要領によると、クレジット会社などの決済事業者が、ポイント還元制度に参加する中小事業者から受け取る手数料の率を「3.25%」以下にするのが条件です。予算成立前の仮登録は3月20日まで受け付けました。4月以降は平成31年度事業として別途登録を受け付けます。登録は申請書類をウェブサイトからダウンロードし、必要事項を記入して電子メールで提出するものです。一方、ポイント還元制度に参加する中小事業者からの登録受付は4月初旬からを予定しており、キャッシュレス決済事業者を通じての登録となります。
ところで、キャッシュレス決済に伴うポイント還元事業は、本年10月から2020年6月までの9か月間、消費者が中小小売店等で購入した商品等の代金をクレジットカードや電子マネー、QRコードなどのキャッシュレス決済手段により支払う場合に5%(フランチャイズチェーンの場合は2%)が消費者に還元される仕組みです。参加する中小事業者は、(1)ポイント還元期間中にキャッシュレス決済事業者に支払う加盟店手数料率が3.25%以下(国が3分の1を補助)となり、(2)キャッシュレス決済に必要な端末の導入費用の3分の1を決済事業者、残り3分の2を国が補助することで自己負担なしに導入できます――支援策が受けられます。
消費税の税率等の改正により、国民の重税感が増しています。この機をとらえてキャッシュレス取引を推進しようという意図を感じます。確かに、極端なことを言えば、全てがキャッシュレスの電子取引となりネットワークで繋がれば、消費税申告に伴うめんどくさい帳簿などの制約はなくなるかもしれません。電子政府のみならず、電子社会まで構築し、効率を上げようということでしょうか。
2019/03/22 16:10:12
過度な節税目的の生命保険
過度な節税に利用されているとして、金融庁が一定のタイプの生保商品を問題視したのに端を発し、国税庁が今年に入ってから通達改正に向けて本腰を上げ始めたことから、2月半ばには同タイプの商品の販売を自粛する生保会社が相次ぐ展開となりました。さらに3月4日を期限に国税庁は生保会社にアンケートを行ったとの情報もあり、関係者の関心は通達改正案がいつ公表されるのか、その適用が遡及されるのかに移りつつあります。3月決算を前に駆込みで同タイプの商品を購入して、利益を圧縮する行動は控えたほうがよさそうです。
問題の節税保険は、会社が契約者となり、役員等を被保険者として加入する災害保障重視型の定期保険です。保険期間の前半は保障の範囲を絞り込む代わりに一定期間の解約返戻金は高く設定するものです。支払保険料の全額を損金算入(法人税基本通達9−3−5)できるとともに中途解約すれば保険料の大部分が戻ってきます。特に国内最大手の保険会社が取り扱う商品がヒット商品となり、多くの中小企業や医療法人が利用しています。 規制の動きとして、まずは金融庁が問題視しました。通達改正にまで及ぶか、国税庁の動きに注目が集まっていましたが、同庁は2月半ば、生保各社に対し同タイプの保険に対する課税方法を定めた上記通達を見直す考えを伝えたことから、生保各社は一斉に販売自粛する動きを見せています。さらに同庁は、通達改正に当たって3月4日を期限に生保各社にアンケートを実施したとの情報もあり、早ければ3月末、遅くとも国税庁の異動時期である6月までにパブリックコメントで改正案を公表し、確定する構えです。
現場からすれば、お客様にお勧めする節税手段がまた一つ消えたという感覚です。昔から繰り返えされてきたやり取りに、金融庁が入場してきた感があります。過去の契約まで遡求すれば、大変なことになります。
賢明なる財務省の皆様、そこら辺のバランスはよろしくお願いいたします。
2019/02/27 08:33:03
平成30年度の確定申告あれこれ
国税庁はこのほど、2月18日(月)から始まる平成30年分の確定申告を前にして、「平成30年分の確定申告においてご留意いただきたい事項」をまとめてHPに公開しました。留意事項は、「配偶者(特別)控除が変わります」「スマホ×確定申告 スマート申告始まります」「マイナンバーの記載等をお忘れなく」「医療費控除について」「忘れていませんか、その所得 申告漏れにご注意を」など全9項目にわたります。
配偶者控除は平成30年分から、控除対象配偶者の範囲が配偶者の給与収入201万円まで拡大されたほか、納税者本人の合計所得が900万円を超える高所得者については廃止・縮減されており、具体的な控除額や適用対象となる収入を図解しています。
同庁HPの確定申告書等作成コーナーをスマートフォン専用画面にしたスマホ申告は、年末調整済みの(1か所からのみ)給与所得者が、医療費控除やふるさと納税などの寄附金控除を適用して還付申告する場合に利用できます。スマホ申告はe−Taxで送信することによってその利便性を受けられますが、従来のマイナンバーカードによる電子署名はできないので、今年から暫定的に実施するID・パスワード方式の電子申告となります。同方式は、確定申告会場で本人確認のうえ、通知を受けたID・パスワードを使って送信するものです。
申告漏れについては、ネットオークションやフリーマーケットアプリ、ビットコインをはじめとする仮想通貨の売却、競馬等のギャンブルから生じた所得について注意喚起しており、特に仮想通貨は同庁HPの計算書で自動計算できることを示しています。
国は、スマホ等様々なツールにより、電子申告を推進し、コスト軽減を図っています。電子政府の施策の中で、税は優等生です。これからもっと拍車がかかると思います。
2019/01/23 19:02:54
違法な調査か?
寝屋川市の元職員が競馬による巨額の収益を申告せず、脱税で有罪判決を受けた事件で、被告人側の弁護士が、本件の調査が別件の調査中に端緒が発見されたことから明るみになったもので、違法な調査による収集証拠は証拠能力がないと訴えていた裁判で、大阪高裁は一審に続き、「調査は違法とまではいえない」と判断しました(平成30年11月7日判決)。
一審の大阪地裁平成30年5月9日判決は、被告人Xに対する調査は銀行側の協力の下に行われたものであり、Xに対する犯則調査に切り替えて調査することも可能であったことから、証拠能力を否定しなければならないほどの重大な違法があるとまではいえないと判断しました。これに対し控訴審でX側は、本件調査は対象者を特定せずに無差別に脱税を発見する目的で行われた可能性が否定できず、その手段自体に重大な違法があると主張しました。
大阪高裁は、査察官が別件調査の中でXの口座情報を持ち帰ったことは違法の疑いが残るというべきであるが、国税当局がXを狙い撃ちにして調査を開始したとは考え難く、仮に口座情報の持帰りに違法があったとしても、そのこと自体から調査全体が違法となるとみることはできないと指摘しました。口座情報の持ち帰りにしても、「選択すべき手続の誤り」であるから、令状主義の精神を没却するほどの重大な違法とみることはできないと判断しました。X側の控訴を棄却しました。
昔、税務署OBの先生から、横目調査という言葉を聞いたことがありあます。税金を払うべきものは払うという姿勢と、手続きのミスをどこまで容認するかの判断です。スッキリしたいですね。これは一例ということでしょう。
2018/12/18 19:37:25
相続分野の民法改正
度重なる民法改正の中でも、今年の7月に成立・公布された相続分野の改正は、相続税業務はもちろん、税理士がサポートする相続手続、さらには生前贈与や事業承継対策の提案に影響を与えることから、いつ施行されるのか注目されていましたが、遺産分割や遺留分など多くの改正項目は来年7月1日に施行されることが判明しました。
法案成立時の改正法附則に規定されていた「自筆証書遺言の方式緩和」は、最も早い来年1月13日に施行されることが既に明らかになっています。遺言書に添付する財産目録はパソコンで作成してもOKとする改正で、同日以降に作成した遺言書から適用されます。今回、施行期日を定める政令で判明したのは、(1)婚姻20年以上の夫婦間の居住用財産の贈与を(相続財産に)持戻し免除とする規定や、預貯金仮払い制度、特別寄与料など新設される規定が来年7月1日に施行、(2)配偶者居住権の創設が改正債権法と合わせて再来年4月1日に施行、(3)自筆証書遺言書の法務局保管制度は再来年7月10日に施行される――というものです。自筆証書遺言の方式緩和を含めると4段階で施行されることになります。
また、預貯金仮払い制度のうち家庭裁判所を経ない方法によって、相続人が単独で払戻しできる額は、相続開始時の預貯金債権の額の3分の1に当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分を掛けた額となりますが、法務省令により、金融機関ごとの上限額が150万円に設定されることもパブコメで明らかになっています。
これらの民法改正により、相続税や相続関係実務の段取りは、大きく変わっていきます。注意深く理解していきましょう。