2023/04/25 09:27:57
販売用マンションの購入について消費税の処理
販売用マンションの購入時にかかった消費税額が、個別対応方式による控除税額の計算上、「課税売上げのみに要する仕入れ」か「共通対応課税仕入れ」かをめぐり争われた裁判で、最高裁は「共通対応に該当する」として国側の主張を認めました(令和5年3月6日判決)。
中古マンションを仕入れ、リフォーム等を施して転売する事業を営んでいるX社は、マンションの仕入れに係る消費税額を「課税売上げのみに要する仕入」として仕入税額控除の計算を行っていたところ、所轄税務署長より「マンションの貸付けによる賃料収入も含まれるため、共通対応課税仕入に該当する」として否認を受けたため、訴訟を提起しました。一審・東京地裁は「賃料収入はマンションを転売するための副産物」として、仕入自体は「課税売上げのみに要する仕入」としてX社の主張を認容。控訴審・東京高裁は、非課税売上を生ずる取引が客観的に見込まれる場合は共通対応に該当するとして、一転X社敗訴となりました。
最高裁では、課税売上と非課税売上の双方に対応する課税仕入は、当該事業に関する事情等を問うことなく、共通対応課税仕入に該当すると解するのが消費税法の趣旨に沿うものというべきとし、X社の上告を棄却する判断を下しました。また、過少申告加算税を課さない「正当な理由」があるか否かについても、事業者としては共通対応とする取扱いが行われることを予測できたため、「正当な理由」はないとしてX社の主張を斥けました。
現在、令和2年4月の税制改正により居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限があり、消費税の処理についてより慎重な判断が求められています
2023/04/11 15:10:10
令和5年度税制改正法案成立、相続税改正6年1月施行
令和5年度税制改正の内容を実施する所得税法等の一部改正法が3月末に成立し、そのほとんどが令和5年4月1日に施行されました。ただし、生前贈与を促す改正として税理士の関心を集めている相続税法の改正等は令和6年1月1日に施行されます。
令和5年4月1日施行の改正から確認すると、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が3年間延長されるとともに、契約終了時の残高に課される贈与税の税率を一般税率(直系尊属から贈与の特例税率より高い)とするなどの課税強化が同日以後に取得するものから適用されます。2年間の期限延長となる結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置も同様の課税強化がされます。
一方、令和6年1月1日以後の贈与に適用される相続時精算課税の基礎控除の創設は、相続税法の改正において60万円控除が規定されていますが、租税特別措置法の改正における110万円控除に読み替えて適用されます。相続税の課税価格への加算期間を相続開始前3年以内の贈与から7年以内に伸ばす相続税法改正は、同日以後の贈与により取得する財産の相続税に適用されます。加算期間の延長により相続税増税となることから、改正前の制度を適用するための駆込みは令和5年中に実施する必要があります。ただし、延長された4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算されないので、税理士の一部では、被相続人の平均余命等によって暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かの試算がされている模様です。
贈与のような長期の年月を見据えたプランを要する税金の出口が、だんだん複雑になっています。人間は年をとります。いろんなことを忘れてしまいます。
ただ、相続時精算課税の基礎控除は朗報です。