2021/07/27 13:08:38
個人住民税の過納金は他の滞納分に充当すべきと判断 (最高裁)
滞納となっていた複数年分にわたる個人住民税とその延滞金等について、いったんは納付され、その後、ある年分の住民税について減額の賦課決定によって過納金が生じた場合の還付金等に関して争われた事件で、最高裁はこのほど、控訴審の判断には明らかな法令違反があるとしてこれを破棄し、還付すべき過納金の額等について更に審理を尽くさせるため控訴審に差戻しを命じる判決を言い渡しました(最高裁令和3年6月22日第三小法廷判決)。
この事件において、控訴審では、減額賦課決定に係る税額を超えて徴収された過納金については、徴収の時点から法律上の原因を欠いていたものであるから、そのまま過納金として還付されるべきであり、その徴収当時、他に滞納分が存在したときであっても、その他の滞納分に充当されたものとして延滞金等を計算する法的根拠は存在しないと判断していました。
これに対して最高裁は、本件のようにある年分の住民税に過納金が発生した場合に、他に滞納分があるときは、まず他の滞納分に過納金を充当すべきであると判断しました。なぜなら、他の滞納分に過納金を充当しなければその分に係る延滞金が余計に生ずることになり、還付金の総額に影響することになるためです。この点で、過納金を他の滞納分に充当することをせずに、そのまま還付することとした計算には誤りがあるとして、納税者側に軍配を上げました。
その結果、控訴審の判断には明らかな法令違反があることから破棄は免れないと判示し、還付すべき過納金の額等について更に審理を尽くさせるため、控訴審に差し戻しました。
よく起こりそうなことです。この判決で、行政の対応が変わるものと思われます。
2021/07/19 11:13:26
コロナ禍における所得税等の申告状況
国税庁がこのほど公表した令和2年分所得税等の確定申告状況によると、申告者数や所得金額は増加したものの、コロナ禍により、申告税額は前年に続いて減少になったこと、納税者本人が自宅からe−Tax送信による申告が大幅に増加したことが分かりました。新型コロナウイルス感染症のまん延・拡大に伴い2年連続で申告期限が1か月延長されたことから、4月末までの申告書提出分が含まれています。
令和2年分の所得税の確定申告書提出者は2,249万人(前年比2.1%増)、うち申告納税額のある人は657万人(同4.3%増)で、申告所得金額は42兆5,497億円(同2.2%増)となりました。ただし、申告納税額をみるとコロナ禍における地価下落に伴う土地等の譲渡所得の減少や緊急事態宣言における自粛要請などによる所得の減少から3兆1,653億円と1.6%前年を下回り、2年連続減少しました。そんな中、雑所得については、社員に副業を認める企業も増えたことなどから8兆2,922億円と6.1%増加し、その申告納税額は657億円と21.4%も大幅に伸びています。
また、コロナ禍もあり、納税者本人の自宅からのe−Taxが320万7,000人へと大きく伸び、税務署申告会場におけるe−Tax利用者の323万2,000人と拮抗しました。外出自粛を背景に、5年前は確定申告者の2%程度だったのが、令和元年分は8.4%、2年分は14.3%と飛躍的に伸びました。当局が思い描いていた税務署会場でe−Taxに慣れてもらい、翌年には自宅からという導線が実現しつつあります。スマートフォンを利用した申告件数も飛躍的に伸び、e−Taxによる送信は倍増の101万8,000人と100万人を突破しました。
コロナ禍により自宅からの電子申告やスマートフォンを利用した電子申告が増加したようです。ますます行政の電子化が進みそうです。
2021/07/07 15:33:23
新型コロナ対策の実質無利子・無担保融資は年末まで継続
経済産業省はこのほど、新型コロナウイルス感染症により影響を受けた事業者に対して、政府系金融機関(日本政策金融公庫及び商工中金)が行っている実質無利子・無担保融資の施策について、昨年12月の経済対策で「当面今年前半まで」としていた申込期限を「当面年末まで継続」することを明らかにしました。
政府系金融機関による実質無利子・無担保融資は、新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1か月間の売上高が前3年のいずれかの年の同期と比較して一定程度減少することを要件とするものです。国からの利子補給で3年間無利子となります。売上高の減少が5%であれば、当初3年間は基準利率から0.9%を引いた低利融資をします。中小事業・危機対応においては1.11%が0.21%、国民事業は1.26%が0.36%となります。さらに、売上高が、小規模の個人事業主は5%減、小規模の法人は15%減、その他は20%減の要件を満たせば、利子補給を通じて当初3年間、実質無利子・無担保融資とします。なお、直近1か月の売上減少の要件については、直近2週間以上での比較も可能とされており、より柔軟な対応がなされている模様です。
実質無利子・無担保融資の上限額は、国民生活事業が6,000万円(8,000万円の融資枠との併用可)、中小企業事業が3億円(同じく6億円の融資枠との併用可)。利率は、融資を受けた当初3年間は実質無利子。いったん利子を支払う必要があるが、後に利子分が助成されます。
無利子借入は、ありがたい施策です。多くの中小企業がとりあえずやっておくという調子で飛び付きました。これから、計画的な返済をやっていきましょう。