コロナ禍による土地評価の検討
緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの第2波が危惧される不透明な経済環境の中、土地取引も停滞し大幅な地価下落が見込まれます。そんな状況を踏まえ、7月1日に全国の路線価を公表した国税庁は、相続税法22条の時価の趣旨に沿って、広範囲に大幅な地価下落が見られる地域には「補正率(仮称)」を設定する検討に入りました。
大幅な地価下落といえば、バブル崩壊の頃が思い起され、年の途中で時価が20%以上下がることにより、1月1日を評価時点とする路線価を下回る場合には、いわゆる時価申告として不動産鑑定士による鑑定評価を使った申告が容認されました。ただ、今回のコロナ禍はバブル崩壊を上回る不況となるおそれがあり、納税者の鑑定評価にかけるコスト、受け付ける税務署の事務量が多大になることを回避するため、課税庁側で、時価を上回らないように補正率を地価下落地域に設定し納税者の申告の便宜を図る構えです。
昨年の台風被害や東日本大震災時に設定された「調整率」は災害のあった特定の日を境に路線価による評価額を減額するものだったのですが、コロナ禍による地価下落は未だ収束を見通せず、特定の日を設定できないため、調整率という用語は使わないようです。新たに補正率(仮称)として、7月1日時点の公示地価(国土交通省が9月公表)などを踏まえ、本年1月から6月の相続開始分の補正率を10月頃に公表したい考えです。申告時期によっては期限間近なことが想定され、同時に同地域を対象に期限延長の告示もする見込みです。7月以降の今年後半の相続開始分の補正率は、10月1日時点の地価ルックレポートなどを踏まえ、来年1月頃に補正率を公表するとの見通しを明らかにしています。
相続税の申告などの際、土地の評価は重要な分野となります。納税者の税負担などの面で大きな部分を占める場合もあります。この度の補正率(仮称)にも注目しましょう。
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