借地権が設定されている土地の評価に当たり、不動産鑑定士による鑑定評価で算定した額は有効か否かが争われた事案で、東京地裁は、税務署長の主張する財産評価基本通達による評価を相当とし、納税者の訴えを棄却しました(平成29年3月3日判決)。
原告Xは、平成20年に死亡した被相続人の長男で、他の共同相続人らとともに複数の土地を相続しました。これらの各土地は借地権が設定された戸建住宅、賃貸住宅等の立ち並ぶ地域であったため、Xは不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し、評価額を算定した上、相続税の当初申告を行いました。ところが所轄税務署長は、本件各土地について「評価通達によらない特別な事情があるとは認められない」として更正処分等を行いました。
Xは本件各土地について、ほとんどの土地は長期間借地契約が継続しており、建物も経済的耐用年数を超えているにもかかわらず建て替えられていないため、将来完全所有権に復帰する可能性が極めて低いと主張しました。これに対し東京地裁は、Xの主張する低廉な地代を基準とした収益価格による算定は相当でなく、評価通達25(貸宅地の評価)に定める借地権控除方式により算定された底地の評価が直ちに時価を超えることになるわけではないと示唆しました。本件各底地について、借地権価額控除方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるとは認められないと判断し、Xの主張を斥けました。
相続税や贈与税などの申告に際し、不動産鑑定士などの評価を用いる場合は、相当な注意が必要のようです。特別な事情の有無をしっかり判断することが安定安心につながります。
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